2010年8月アーカイブ

ゲーム開発の見積りについて考察 [3]

本当に費用はそれだけ? (2/3)

経営、総務、経理

会社を経営していると、開発や営業以外の人もいます。

経営者、総務経理、管理職などです。

この人々は会社に無くてはならない人で削る訳にはいきません。

最前線の人達からすれば「お荷物」みたいな気持ちになるかもしれませんが、彼らは最前線の人達が心おきなく仕事ができるように手配し、余計な仕事を全て代わりにまかなってくれる良きサポーターです。

会社を動かす為に必要な彼らは基本的に「いるだけで人件費が発生する人」です。

プロジェクトが短く完了すれば、削減された日数だけこの人たちにかかる費用も少なくなります。

「社長の給料を下げろ!」なんて話をよく聞きますが、さっさと仕事を上げて売り上げ上げれば原価的に社長の費用は下がるんですよね。社畜言われようが、早く仕事を完成させる事が逆説的なようですが社長の給料を下げる結果になります。

話はそれますが、総務経理とか経営を軽視する人がいますが、とんでもない!

むしろ数字を数えられないと会社は簡単につぶれます。

そして意外なところでお金が沢山かかり、意外に気がつかないなんてことも沢山あります。ですから商売していて売り上げ上がっているのに何故か青色吐息なんてこともあります。

あと社長営業はとても重要。「現場主義」とか言って開発現場から離れない社長はいけないと私は思います。もちろん、現場は大切にして欲しいんですが、その為に外に出て営業しまくって欲しいものです。絶対その方が現場は楽になります。

現場に社長が現れたら、開発スタッフは「何してるんスか?!」「早く外に出てくださいよ!」と是非騒いであげてください。

彼らの人件費を組み込んだコスト込みのプロジェクトはこうなります。

プロジェクトガンチャート 1
作業項目 担当 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 合計
仕様書Aさん\100\100\200
シナリオAさん\100\100\200
雑誌用画面写真Aさん\100\100
広告手配Eさん\100\100
経営\50\50\50\50\50\50\300
総務\50\50\50\50\50\50\300
経理\50\50\50\50\50\50\300
合計 \1500

プロジェクトが長引くと固定人件費がそのまま影響します。

プロジェクトガンチャート 2
作業項目 担当 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 合計
仕様書Bさん\100\100\200
シナリオCさん\100\100\200
開発進行Dさん\100\100\100\100\400
雑誌用画面写真Bさん\100\100
広告手配Eさん\100\100
経営Fさん\50\50\50\50\200
総務\50\50\50\50\200
経理\50\50\50\50\200
合計 \1600

プロジェクトが早く終了すれば、その分固定人件費が低く抑えることができます。

(どちらのプロジェクトも売り上げが等しい場合の試算です)

~続く~

ゲーム開発の見積りについて考察 [2]

本当に費用はそれだけ? (1/3)

両方のガンチャートは開発担当者のスケジュールのみが入っています。

しかし会社で活動している以上、本当はそれ以外の部署や要素がからんでいます。

作業工程を評価する上でそういった箇所にも目を向けると、新しい事実が見つかったりします。

たとえば、

  • 営業
  • 経営、総務、経理
  • 機材管理

といったものが関係します。

営業

会社はモノを売るところ

昔勤めていた会社で社長が「君の仕事は何かね?」と質問したことがありました。

私は「ゲームを作ることです」とキリッと言いました。

社長は「違うよ」と否定し、「君の仕事はゲームを売ることだ」と言いました。

当時私はムッとしたものですが、今思えば会社は商品を売るのが主な仕事。会社に勤務している以上、売る商品を作るのだから「売る」という意識が当然必要なのだという事なのだと思うようになりました。

営業ツールを作る仕事

商売の最前線は営業です。営業が無ければ会社は成り立ちません。

会社にとって営業が売りやすくなるよう支援する事がとても大切な事になります。

営業からは「雑誌に載せる画面写真が欲しい」「セールス用コピーが欲しい」「早く広告を出したい」といった要望が来るはずです。

開発は営業にツールを提供する仕事が発生します。例えば雑誌にのせる開発画面、設定資料、イラストレーション、販売用テキストなどなどです。

実はそういった営業ツールの作成がスケジュールに組み込み忘れてたりします。

当然ですが、作業日数が圧迫されていたり、作業人員が少ないと、営業ツール作成の日程は圧迫されます。

圧迫された営業スケジュールは、ゲームの売り上げに悪影響をおよぼします。

プロジェクトガンチャート 1
作業項目 担当 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 合計
仕様書Aさん\100\100\200
シナリオAさん\100\100\200
雑誌用画面写真Aさん\100\100
広告手配Eさん\100\100
合計 \600

Aさんが全ての作業を完了させてから営業用資料として雑誌用画面写真を作成すると、営業のEさんが広告を仕掛けられるのは6日以降になります。

これに対して仕様書作成担当のBさんが雑誌用画面写真を作成するならば、Cさんが途中作成している段階で開発進行を邪魔せずに営業のEさんに写真を提供できるので、Eさんは4日には広告を仕掛けられることができます。

この営業チャンスの時間差が実際の売り上げに大きく影響する事があります。

プロジェクトガンチャート 2
作業項目 担当 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 合計
仕様書Bさん\100\100\200
シナリオCさん\100\100\200
開発進行Dさん\100\100\100\100\400
雑誌用画面写真Bさん\100\100
広告手配Eさん\100\100
合計 \1000

見積もってない作業があったりする

営業ツールの準備作業は何故か開発スケジュールの中に含まれず、「開発のついでに提供する」というのが慣例になっている会社がよくあります。

また、提供された情報を加工するのも営業の仕事になっていたりします。

開発が遅れたりすると、営業スケジュールに大きな影響を与え、売り上げがあがらない恐れがあります。特に開発画面を雑誌に提供するような場合は、画面がまったくできていないと、雑誌専用に画面をでっち上げるという妙な作業が発生したりしてしまいます。

また、雑誌に送った仕様が実装されていなかったり、食い違った内容を補完する為に実仕様を変更しなくてはならなくなったりと、本末転倒な事がおきてしまうこともあります。

営業チャンスは早めに作ってあげる

そもそも営業は早めに手配をし、必要な時に手を打うつことで売り上げが上がります。

ゲームを売る以上は仕事ですから、営業も開発も同じチームとして有機的に動けるような体制を作ることが要求されます。

ゲームは商品ですから、売れなくてはしょうがありませんしね。

~続く~