2011年9月アーカイブ

私は企画アイデアを考える時に必ず心に留めていることがあります。

それは、

「自分のアイデアは必ず誰かが思いついている」

ということです。

まず、私は天才じゃありません。

ましてや発生確率250億分の1の異能生存体でもありません。むせません。PSでもありません。

パイルバンカーかっこいいです。

私がアイデアを閃くのは、

  • 市場ニーズ
  • 世界的環境の変化
  • 流行

等、様々な要因が自分に影響し、その結果として思考が導かれているからだと思ってます。

即ちグローバルな環境を共有している他の人も思考が同じ結論に達する可能性が高いのです。

ですから、アイデアが思いついたらすぐにネットで検索します。

自分が思いついた事ですから、説明文は想像がつきます。

その説明文のキーとなる言葉、つまりキーワードを検索します。まんまです。

大概は一発で検索結果が出ます。

で、だいたい近似か完全に一致する内容になります。

ある意味自分のアイデアは正しかった事になります。嬉しいけど、ちょっと悔しい。

自分が遅かったか、実力が足りなかったかのどちらかです。

問題は検索されなかった時です。

やった!とばかりに作業に入るのは危険です。

良い子の諸君!

よく頭のおかしいライターやクリエイター気取りのバカが

「誰もやらなかった事に挑戦する」とほざくが

大抵それは「先人が思いついたけどあえてやらなかった」ことだ。

王道が何故面白いか理解できない人間に面白い話は作れないぞ!

と、偉い四次元殺法コンビがおっしゃってました。

自分のアイデアは、ダメな所があるから実現しなかった。

と考えるべきです。

そこで、「何故実現しないのか?」を考える作業に入ります。

先人が思いついたけど、実現させなかった原因がある筈です。

だいたいアイデアを思いついた瞬間から数時間は、テンションが上がってて考えが偏っている場合が多々ですから、後日賢者になった自分にお伺いをたてるのが一番です。

一回寝て、翌日あたりに先日の自分の戯言を確認します。

だいたいは、「そりゃあ、無理だよ」っていう事になります。

ただ、「無理だけど解決策がある」なら是非検討すべきです。

解決策がなかったら、もう捨てます。

実現しない原因がどうしても分からない場合は、他の人、特に異業種の人に意見を求めてみましょう。

法律的にダメとか、技術的にダメとか、色んな所で実は無理、みたいな事があるかもしれません。

色々検討した結果、

「こうすればうまくいく」

という事になって、初めて企画書にしてみたりします。

この後は信念をもって進むことになります。

というわけで、

自分のアイデアは必ず誰かが思いついている

という考えは、企画のデバッグ手法として結構有効ですし、色々勉強できるものだったりします。

ローカライズの勘違い

一方の国で作ったモノを他方の国にあわせる事をローカライズといいますが、どうしても「言葉を翻訳すればOK」みたいな勘違いが未だにあるようです。

記野さんは「文化の違いやESRBなどのレーティングシステムのからみなどがある」といいます。


文化の違いは海外に滞在すればイヤという程痛感します。価値観の違いも物凄いです。ご飯を奢ってもらった翌日、日本人なら「昨日はごちそうさまでした」とお礼を言いますが、中国人は決してお礼を言いません。

これは中国人が横暴なのではなく彼らにとっては後で「ごちそうさま」と言うのは催促になってしまうそうで、ごちそうになっておきながら後々までまた催促するなんてのは失礼極まりない事なんだそうです。


お礼の心は同じでも行動は180度違うのですから、文化を知らないでローカライズをすれば当然誤解が生まれますし、トラブルがおきますし、ゲームを正しく評価されなくなってしまいます。


レーティングも「日本ではグロNGエロOK、アメリカではグロOKエロNG」なんて言われるらしく、評価基準が一律ではないです。EUも各国でレーティング評価が異なったりしています。

欧米から見たら日本はHENTAIなんです。想像以上に。

以前ドイツでホモマンガを購入して、ドイツの知人に喜んで見せたら凄く苦い顔されたのを覚えています。当時は何故?と思ってましたが、今思うと恥ずかしいです。だって、ドイツの本屋では普通に乳首あらわなお姉さんが表紙を飾ってる雑誌が並んでたのにですよ。いや、記憶によればそうでしたよ。

ハンバーガー屋で普通にスカイハイ×オリガミサイクロンの話ができる日本は良い国です。


記野さんは「現地の担当者やセールスを巻き込むこと。彼らのコンテンツでもある、というモチベーション。ものによっては開発企画からジョインしてもらう」と言ってます。

また、「ローカライズ次第ではコンテンツやタイトルそのものをぶち壊してしまう

翻訳者はある意味現地側のクリエイター。リスペクトとできる現地プロデューサーが必要」だそうです。

結局は地域を巻き込み、「みんなで作る」というのが良いらしいです。

記野さんのステレオタイプな結論

1.自力から「自力+他力」のタイとなパートナーシップ

経験者やコンサルタント・エージェントの力を借りること

信頼できる「現地パートナー」見つけること

→契約で縛られているので甘えが発生しない

2.パートナーへのリスーペクト

地の利を軽視しないこと

→「郷に入れば郷に従え」生まれ育った現地人に現地テリトリは任せる

3.語学力ではなく誠意のある交渉力

語学はツール。能力ではない。誠意国境も言葉も越える


私が考えるには、自分達で全てをまかなうオールインワン思想は厳しいですし、現実感は薄いのかな?ということです。

プロジェクトにマッチングしたスタッフ、座組みを作り、契約でキチンと結び合う。

海外、地域については現地を専門家としてスタッフに早期から加わってもらう。

日本はもともと中小企業がたくさんあって、色んな特徴がある会社がいっぱいある国ですから、プロジェクト毎にスタッフを組み合わせるスタイルはやりやすいかもしれませんね。

そして...日本の業界は狭いのでキチンと誠意のあるお仕事をするかしないかが、すっごく影響でますしね。

日本は日本のコンテンツを作ろう

欧米市場向けにシフトして企画から練るという失敗を日本企業はよくしてしまうそうです。

例えば「欧米ではマッチョでアクション性が高いもの(FPSとか)が人気。そうじゃないと売れないから、そういうのを作って売ろう」というもの。

海外の方曰く「日本で売れないもの、評価されないものは、海外でも評価されない」だそうで「日本でしっかり評価されたものをこちらで売って欲しい」そうです。

海外の「ヘンテコ日本」から学ぼう

確かに海外の人が作ったナゾの日本人表現を見ると、違和感が半端ないです。(今となってはヘンテコ日本系もジャンルの一つとして受け入れてしまえているのは、日本の懐のデカさなんでしょうけど...)

海外の人からヘンテコアメリカンとかヘンテコヨーロピアンをわざわざ日本製で買う程マニアックな人は少ないと思います。


余談ですが、フォントの世界でもGaramond、Bodoni、Futura等によってヨーロッパ各国の地域性があったりして、凱旋門にBodoniを使ったデザインをしてしまうと、さながら東南アジアの不思議な日本語Tシャツを見たような違和感を感じるのかな?とか思ったりしています。


アメリカ人が作った鉄砲使ったゲームは日本人が作った日本刀使ったゲームみたいなポジションなので、簡単にマネできないし、ヘタなマネして「わかってない」と怒られたくないですよね。

日本ファン向けに作るものもありでは?

記野さん曰く「日本ファン向けに作るものもありでは?ニッチ、されどニッチは客単価は高い」

HENTAI文化はどの世界でも客単価は高いですよね...。情熱も素晴らしい。いや、誉めてますよもちろん。

そしてワールドワイドのニッチは私達にとってマスである。という思考はweb通販では結構当たり前の話なんですが、ゲームを作る時もそういう考えがあって良いとは私も思います。

日本文化が好きな人に、ちゃんとした日本のゲームを提供する。彼ら彼女らはその為ならちゃんとお金払ってくれる(だろう)し、今ならダウンロードマーケットでインフラ問題は解消されてます。


国内で色んな特徴のある会社が、色んな日本の良いものを海外に売れば良いのでは?というシンプルな答えで良いのかもしれません。

だって、わざわざ好きでもないハゲマッチョ作るなら、自分達が慣れ親しんだ眼鏡の妹にメイド服着せた方がモチベーション上がるのではないでしょか?(まあ私の所はゴブリンとかゾンビだったりなんですけどね)

~続く~

現地のカルチャー、商習慣は住んでいる人にはかなわない!

「海外に出るときは日本人で一緒に、できれば自社(子会社含)で完結したがる」そうです。日本で成功した事例をそのまま海外にもっていったり、海外でも身内で固めるケース。


記野さん曰く「現地のカルチャー、商習慣は住んでいる人にはかなわない!」

結局、現地の文化習慣は現地の人が一番知っている訳で、ローカライズというのは単にゲームの文言を外国語にするだけでなく、その地域の文化に合わせることですし、商習慣にしてもその地域にマッチングしたやり方は現地の方々なんですよね。


これは海外の話だけでなく地域振興の話も同じで、東京の企業だけで寄り集まって地域に大きなハコモノ計画を立ててもうまくいかない例がありますね。

地域の人達の地域に対する愛情と、地域と一緒に盛り上げていくという、地域の人達を巻き込むスタイルが長い目でコンテンツを育て上げる結果になってます。

地域を巻き込むこと

記野さん曰く「地域を巻き込んで地の利を得ることも必ず選択肢に、信用できる現地パートナーとの関係構築が鍵」だそうです。

もちろんその中でもビジネスとして契約とお金で縛った関係には一定のwin-winが生まれるという思想が大切との事。一見ドライで冷たいように見えますが、ちゃんとそこらへんをキチッとするのって信頼関係を作る上で大切なので、むしろ優しい結果になるんですよね。

~続く~

9/1にCreative ConnectionTokyo主催「ネットワーク系ゲーム事業者向け海外展開支援セミナー」が秋葉原ダイビルで行われました。

その中で「国産ゲームの海外進出における現状と課題、対策について」と題してコンサルタントとして海外市場進出支援等をされている株式会社カイオス代表取締役 記野直子さんの講演がありました。

株式会社カイオス


国産ゲームを海外に売る時に犯しがちな間違いから、今後どのようなスタイルが必要とされるのかを、結構フランクな感じで説明されていました。

講演内容から私が感じた事を雑多に記していきます

国内と海外市場の違い

日本は卸が強く、海外は小売が強い。

海外の場合オープン価格のせいで売れないソフトなんかは、初回$59.99→一週間後$39.99→次週$9.99なんて派手な値崩れがおきたりして、メーカーのいう事を聞いてくれないとか。


まあ日本でも購入する権利があればワゴンで安く買えますよね(笑)

ダウンロード販売が活発で、インフラがあまり整っていなくても日本よりも進んでいるそうで、私が思うには、米国の場合は家から小売店までの距離的な理由もあるのかもしれないですね。

国内と海外の契約書の感覚

日本の場合「仲良くやりたいからもめないではじめようよ」というメンタルが「契約はあとまわし」「契約は口約束で臨機応変に」というスタイルになりがちという指摘がありました。


「契約書」って人を騙す道具ってイメージがつきまとっているのか、契約書を交わす際にギスギスして人間関係が壊れてしまうのではないか?という恐怖感がわいてしまう人もいるのは確か。


海外の場合は「どんなに契約に時間をかけても、契約してから仕事」というのが普遍。

そもそも契約書はもめた時のためにあるのですから、一言一句ちゃんと確認すべしとの事。

自分の権利は自分で守る。契約書はその為の道具。著作権、商標などはきちんと把握すべしだそうです。著作権、商標関連について勉強するのは当然なのですが、法務に詳しい人とか、法律事務所の方とかにチェックしてもらえるようにしておくのが良いでしょうね。


私の経験からすると、ミスしやすいのは...

  • 仕事が慌しく、あれもこれもやらなきゃ!
  • なんか文字細かい!見慣れない言葉!ややこし!
  • あーあーあー時間がない!!!
  • あばばばばばばばばば

って時なんですよね。

できれば詳しい人にチェックしてもらって、内容を口語で翻訳してもらうのも良いと思います。

もちろん、時間がある時は自分でチェックして、勉強も常日頃からするのは当然ですけどね。

~続く~

世界観というと

「中学二年生のノート」

「ゲームに意味無い壮大なストーリー」

「説明書にちょろっと書いてあるもの」

「キャラ設定みたいなもの?」

とかそんなイメージをもってる人が多いかと思います。

ゲームを開発する人達でも、

「とにかく作ってしまえれば良いんだから、いらないよ」

「ゲームなんだから細かい事はいいんだよ」

「ヒットした後で設定資料集を作って売ればいいんだよ」

「ゼビ語とかしゃべらないし」

とか、とかくいらないものとして真っ先に捨てられるものの一つなんですよね。

でもまってください。

本当に不必要なんでしょうか?いいえ必要なんです。

世界観があれば、ゲームは早く安く正確に作れるんです。

ちゃんと「作る側」からの考えで世界観の存在価値を考えてみましょう。

グラフィッカーに発注する例

昔の古きよき時代のように、ゲームは一人二人でコツコツ作る時代ではなくなってまして、現在では何人何十人もの人がゲーム開発に携わっています。

(ソーシャルゲーム開発は現在のところ極めて少数ですが・・・)

例えばグラフィッカーに剣士の絵を描いてとお願いするとします。


企「男の剣士を描いて下さい」

グ「どうでしょう?(剣にリボルバーがついている)」

企「すいません、リボルバーは外してください」

グ「わかりました(剣にパイルバンカーがついている)」

企「すいません、パイルバンカーは外してください」

グ「・・・(普通の板金鎧の騎士)」

企「板金鎧は違うんですよね...あと剣はもっと細身で」

グ「イライラ」

企「この世界は火薬も蒸気機関も無くて、毒が発達してるケミカルマジックファンタジーなんですよ」

グ「最初に言えよ!!!!」


というように、何回もリテイクが発生してしまいます。

もちろんイメージ出しでは色々なやりとりが必要ですが、最初に「ケミカルマジックファンタジー。主人公種族はゴブリン」って世界観設定をしっかり作っていれば、グラフィッカーは最初から吹き矢をもったかっこいいゴブリン剣士を描いてくれた筈です。

そうすれば、そこから更に精度の高いグラフィックの修正案を出すことができます。結果、作業工数は少なくなりますし、クオリティも上がります。

つまり、安くて美味しいものができます。

世界観はスタッフの「共有認識」

グラフィックの例を出しましたが、シナリオやプログラム、サウンドに至るまでほぼ全てにおいて世界観を軸にすると制作がスムーズになります。

世界観は「特に指定するまでもない特徴」を示す、制作のベースです。

世界観を作ることは、仕様書のベースとして使う、いうなればゲーム開発の憲法のような存在です。

ですので、世界観を作るというのは、ゲーム開発のお約束・ルールを作るに等しく、これをちゃんと作るとリテイク数は減るし、スタッフのモチベーションは保たれますし、コストは安くなるし、スタッフの引継ぎが容易であると良いことづくし。

というか、本来は必要不可欠なものです。

必要となる世界観というのはどういうものなのか?

開発で必要とされる世界設定は一般公用語ではまったく使われない不思議な単語の羅列とは違います。

仕事で大切なのは「スタッフの共有認識」ですので、できうる限り皆が理解できる言葉を使い、クリエイターの創造力を阻害しないよう適度に空白がある設定が要求されます。

実際に有用性の高い設定の形については、いずれ書いてみたいと思います。