ゲーム開発の見積りについて考察 [9]

次の仕事をまわしませんか?

人数は適切に余裕をもって

一人のスーパーマンが頑張るプロジェクト1は4日で終わるつもりが結局12日かかりました。

他方分担作業したプロジェクト2は4日で終わるつもりが6日で終わりました。

機会損失額を含め、差額\2,100-、分担作業したプロジェクトの方が安くすみました。

クオリティ管理も含めるとこの差はもっと顕著になると思います。

人件費を削りまくり、人員数が極めて限られたプロジェクトは、結局、予算的にも時間的にも大変コストのかかるものになると思います。

作業時間が延びれば、当然リスクが比例して伸びます。

一つのプロジェクト時間は短く完成させ、次のプロジェクトを動かすべきだと思います。

クオリティUPに縛られて、プロジェクトが伸びることがよくあります。

クオリティUPと仕事サイクルのバランスを考えて

残念なことにゲームのマーケット規模はあまり成長しません。

限られたパイの中で売りを続ける以上、クオリティをほんの少しあげる為に数ヶ月試行錯誤するよりも、「ここで終わり」と決断して次の仕事に移るほうが売り上げは上がります。

jpgファイルを圧縮するときに、「客は圧縮元を見ない」という事を心にするという話がありますがゲームもそうで、作っている最中のモノを見ている人はお客も同じ目線であると錯覚しやすかったりします。

テクスチャの1ドットの違いなどユーザーにはどうでも良いことで、むしろ早く遊べる、発売日にちゃんと売る方が重要でしょう。(もちろん一定のクオリティの話ですが)

ここで止める勇気も大切

絵や文章などクリエイティブな仕事をしている人なら良くわかると思うのですが、「手を加え続けたい」という誘惑は耐え難いものです。そして、それを続けていても所詮は自己満足に過ぎず、見る人には何の感動も生まない事も知っています。

しかし「ここで筆を止める」という勇気はクリエイティブな仕事をしている人ならば必ず備えなければならない必須技能でしょう。

そして次の作品に手をかけ、沢山の作品を輩出したクリエイターが結果として質の高い作品を生み、高い評価を受けることになります。

期間内に作ったものが自分たちの実力

時間とお金をかければ、どこまでも質の高いものは作れる。と思いたくなります。

また実際にある程度はそのとおりです。

しかしプロである以上、今行っている作業は仕事です。

限られた時間と費用の中で作ることが使命です。

そして期限の中で出来上がったものが今自分達ができる実力そのものなのだ、という事を認識し、その認識の中でスケジュールや費用について見積りを立てるべきなのです。

「うまくいけば」「がんばれば」「寝なければ」という、たられば前提の見積りは、見積りではなく願望です。願望を仕事に盛り込むのは決して誠実な仕事では無いでしょう。

「完成させた回数」がクオリティを高める

他にも機材のリース料やライセンス料とか、持っているだけで発生してしまう費用に対して費用対効果を高めようとするならば、生産性を高める必要があります。

それはクオリティを高くして売り上げを上げようとする努力も必要ですが、それ以上に大切な事は「何回製品を作ったか」という事実で、そこには売り上げもさることながら、繰り返し完成させた事によるノウハウの蓄積が資産となってきます。

次の商品でよりよいものを作り、よりよく売る為には、経験が必要となります。

経験を得る為には、様々な商品を売ってお客様と接し、試行錯誤を繰り返すことです。

クオリティ主義で視野狭窄にならない考えも必要

クオリティにこだわる開発者は少なくありません。むしろクオリティ至上主義者はとても多いと思います。

もちろんクオリティが高い方が良いに決まっていますが、ゲームを売る仕事をしているという事を忘れてはいけないと思います。

少しイヤな言い方をしますが、初動売上げにクオリティはそれほど影響しません。

初動は営業の広告宣伝によるところが大きいです。

ではクオリティは何に影響するかというと、初動以降の売り上げや続編の売り上げです。

クオリティは料理の味と同じで触ってみないとわかりません。

ですから触る前の評価ではクオリティは関係しないんです。

触った後で「これは良いものだ」と判断されたら、信頼できる人が「あれは良いものだ」と言ったら、次も買う動機につながります。

クオリティは「商品の信用」「リピート促進」と考えてた方が良いのではないでしょうか。

~終わり~

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